貯筋しましょう!(侵襲時の代謝の特徴)

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はじめに

今回も2/13.14の呼吸の講習会に行った時の復習の記事です

僕というフィルターを通ったものなので、講師の先生方の趣旨とは異なるのでご注意下さい

今回の内容も、僕の主戦場である維持期に繋がりのある事なので記事にしてみました

 

 

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侵襲時の代謝の特徴

手術などをした時、身体は損傷した部位を治そうとして多くのエネルギーを使うのですが、その主なエネルギー源の1つが筋肉という事をご存知でしょうか?

侵襲時、点滴などでいくら多量のエネルギーを投与しても、この筋肉を分解してエネルギーを取り出す働き(= 糖新生)を完全に妨げることはできません

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今回、先生の講義で、その理由がサイトカインにあるという事を教わりました

侵襲によりサイトカインが高値になると、この糖新生は低下せず、加えてこのサイトカインは血管内から組織への糖の取り込みを制限する作用もあるため、もともと身体の中にあるエネルギー源(筋肉・肝臓のグリコーゲン・脂肪など)が使われます

 

この血管内をエネルギーを満たそうとする作用は、侵襲を治そうとする元々僕達の身体に備わっている機能(= ホメオスタシス)なんでしょうね

 

なので手術中に点滴で多量のエネルギーを人為的に血管内に入れてしまうと、身体の本来持っている機能を過剰に上乗せする形となって高血糖状態となるリスクがあります

高血糖になればエネルギーがイッパイあるんだし、いいじゃんと思われるかもしれませんが、感染しやすくなり色んな合併症を引き起こしてしまうため、手術後当日はブドウ糖含有製剤の輸液を行わないという方法が望ましい、とも言われています

手術などでモロ侵襲している訳ですから感染してしまったら一大事ですね

 

またリハビリと栄養に詳しい若林先生のこちらの本のP54に、以下の様に過栄養のリスクについて書かれています

 

「侵襲時に多くの外因性エネルギーを投与しても、筋肉の蛋白質の分解を抑制することはできない。むしろ過栄養はノルエピネフリンの分泌を増加させることにより、栄養ストレスとして骨格筋の分解を促進させる」

 

 

傷がついたからといって、単純に沢山栄養を入れればいいって訳ではないんですね

 

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また患者さんによっては輸液などしたおかげか、手術後体重がそれほど変わってない方もいるので一見良かったね、と思えるかもしれません

しかし、それは点滴などによって補われた余分なエネルギーは脂肪になっちゃって体重は減っていないだけで、筋肉量は減少している状態なのかもしれません

あるいは単に水分過多で浮腫っているのかも

 

 

 

貯筋をしましょう!

ある程度の筋肉量のある方だったら、手術で多少筋肉量が減っても日常生活の動作が行えなくなったりすることは殆どありません

しかし筋肉量がもともと少なくて、普段の生活では何とか動作行えている様なギリギリの状態である高齢者の方だったらどうでしょう?

手術がきっかけで動作が行えなくなるリスクが高くなるのではないでしょうか

また動作が行えなくなると、普段の生活で動く量が減り、更に動作が行えなくなる可能性(=廃用の悪循環)も高くなります

 

なので普段からしっかり筋肉を貯めておきましょうという事なんです

 

この普段というのがぼくの主戦場の維持期(訪問リハビリテーション)と重なる訳です

つまり維持期でフレイル(虚弱)を予防しておくということが大切になります

手術は若い人に比べ圧倒的に高齢者の方に多い訳ですから

 

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筋肉を貯めるのに必要なのは運動!

糖や脂肪は食べるだけで体の中にグリコーゲンや中性脂肪として簡単に貯めておく事ができますが、筋肉はタンパク質(アミノ酸)を食べるだけでは貯める事ができません

単にタンパク質をたくさん摂るだけでは、脂肪になってしまうだけです

 

タンパク質を摂取して、なおかつ運動するという刺激がないと身体の中に筋肉として貯める事ができないんですね

しかもタンパク質から筋肉を作る際にはエネルギー(糖)も必要とします

多量の筋肉を貯めることが仕事のボディビルダーは、筋肉を沢山つくる時期(増量期)には、ハードな運動をしつつ、多量のタンパク質に加えて、多量の糖も同時に摂取されています

要するに、筋肉を貯めるのは結構手間が掛かる訳なんです

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高齢者でも筋肉がつくの?

でも筋肉をつけれるのは若い人だけなのではないかと思う方もいると思いますが、高齢者も若い方同様、いやそれ以上に筋肉を貯めれます

S1

上のスライドは以前に「転倒予防」の講義で使ったスライドの1つなのですが、こちらのスライドは各年代で筋トレによってどれだけ筋肉の量が増加したのかを表した図になります

結果は図の様に若い人よりも高齢者の方が筋量が増えた、という面白い結果になっています

この理由としては、若い年代の方は普段からある程度活動的に動いているため、もともと筋量が多い状態にあったのに対して、高齢者は活動量が少なく、もともと筋量が少ない状態であったためではないかと思われます

でもね

高齢者の方が筋量を貯めれる伸び代(しろ)は大きい訳ですよ

 

 

 

どこの筋肉を鍛えたらいいの?

人間には身体を動かす筋肉が400個近くあるためどこを鍛えたらいいか迷われると思います

 

その参考になるのが下のグラフです

こちらのグラフは男性において20歳の頃の筋肉量を100とした時の身体の各部分の筋量の変化を年齢毎に表したグラフになります

(福永哲夫:貯筋運動指導者マニュアル2006,保健同人社より引用改変)

SDS

このグラフの上の水色の折れ線が「上腕前面」で要するにの筋肉を表しており、下の緑の折れ線が「大腿前面」での筋肉を表しています

一目瞭然だと思いますが、歳をとるとともに「手よりも足の筋量の方が減りやすい」という事が分かると思います

その差は歴然ですね

昔の人がよくいう「老化は足から」というのは本当なんです

なので、足の筋量を増やす様な運動を中心にしていけば良さそうな事が分かります

 

 

まとめ

みんながみんな手術をする訳ではないのですが、手術などをすると筋肉の量はどうしても減ってしまいます

なのに筋肉は脂肪と違って簡単に身体に貯めておけません

高齢者の人は特に普段から運動をする事で筋肉を貯めて(貯筋)して、いざという時(手術など)に備える事が、健康的に過ごせる寿命を延ばすことにつながると思います

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました

 

 

 

 

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