「呼吸介助」 と 「スクイージング」の違いについてサクッとまとめてみた

はじめに

呼吸リハビリテーションについて看護師さんから講義を頼まれる時や、質問される内容は「呼吸介助」や「スクイージング」などの排痰手技に関する事が特に多いです。

臨床でされている方が多く、すぐ使いたいと思っている方が多いからなのでしょうね。

また話を聞いていると、「呼吸介助」と「スクイージング」を混同されている方も結構いらっしゃいます

そこで今回は排痰手技、特に「呼吸介助」と「スクイージング」との違いについて話をしていきたいと思います。

 

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排痰手技の歴史

「呼吸介助」も「スクイージング」も日本人が開発した日本発の手技だという事はご存知でしょうか?

また日本ではこの「呼吸介助」や「スクイージング」は排痰手技の1つとして、よく臨床で使われていますが、欧米では殆どされていないという事も?

 

昔は日本も欧米も「体位ドレージ」と「軽打法」が主流でした。

しかし途中から日本では「呼吸介助」や「スクイージング」など治療者が排痰を促す方向で発展してきたのに対し、欧米では「huffing」や「ACBT」など患者自身で排痰を促したり、「アカペラ」や「カフアシスト」などの機器で排痰を促す方向で発展してきたという違いがあります。

そういう違いがあるので、欧米の排痰に関する論文では「呼吸介助」や「スクイージング」などの治療者の手を使った排痰法(用手的排痰法)の記載が少なく、機器を用いた論文ばっかりです。

まぁ機器を用いれば数値化(あるいは再現)しやすい、といった事情もあると思います。

その方がエビデンスは得やすいですし。

 

「呼吸介助」や「スクイージング」の様な徒手的なものとなると、その手技を標準化することはかなり難しいと思われます。

 

その標準化に向けてだと思いますが、

「呼吸介助習熟度評価表の評価者間一致度及び一回換気量増大に影響する要素の検討.田中貴子 等.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌2015」

の論文が J-stage で無料で公開されているので、興味のある方はご覧になる事をオススメします。

コチラ ⇒ https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcr/25/1/25_95/_pdf

 

ちなみに現在でも「体位ドレナージ」は主流ですが、「軽打法」に関しては気管支攣縮を誘発させてしまう場合があったり、排痰の機序が不明確という事もあって現在ではあまりされていません。
しかし千住先生の講義の中で、患者さんの中には「軽打法」の方が排痰しやすい方もいるので、リスク管理をしながら行っている、といった話もされていました。

 

体位ドレナージについてぼくがまとめた記事はコチラ

楽な肺理学療法②( 訪問看護師さん対象: 吸引)

 

 

 

 

 

 

呼吸介助とスクイージングの違い① (開発者)

「呼吸介助」は、1970年台伊藤直榮(なおえ)先生がカナダ留学中に師事したDr.Kolazkowskiと共同で開発した手技であるのに対し、「スクイージング」は、現.昭和大学教授の宮川哲夫先生が開発されました。

 

伊藤先生は以下の「日本肺理学療法研究会」という団体で普及活動を行われている様です。

肺理学療法の研究会等を行い、会員相互に情報交換と親睦を計る 当研究会事業 

 

 

 

 

また宮川先生が「スクイージング」の講習会を全国各地でひらいてくれたおかげで、(特に看護師さんの間で)肺理学療法ブームが起きたのではないかと思っています。

ちなみに愛媛にも年1回来られていて講習会を開いて頂いています。

以下の愛媛呼吸リハビリテーション研究会のHPで開催等が紹介されていますよ。

愛媛呼吸リハビリテーション研究会(理学療法士、作業療法士、看護師、言語聴覚士)

 

 

 

ぼくも参加しました

 

 

 

呼吸介助とスクイージングの違い② (圧迫方向)

「呼吸介助」も「スクイージング」も圧迫方向は現在は同じで、胸郭の生理学的な運動方向に向かって圧迫するとなっています。

しかし、ぼくが10年ぐらい前、大阪で「スクイージング」の講義を受けた時には、カリナ(竜骨)と呼ばれる気管分岐部に向かって圧迫すると習いました。

ここ

もちろんカリナなんて肉眼で見えないので、胸骨角(気管分岐部のある所)を目印にしていました。

その頃はまだ「スクイージング」の発展途中だった様です。

そのため昔「スクイージング」を習ったままでアップデートしていない方は注意して頂ければと思います。

 

 

 

呼吸介助 と スクイージングの違い③ (圧迫の程度)

肺気量

「呼吸介助」・・・安静呼気位を超えて胸郭の動きが自然と止まる所。一定の圧を加えてその圧が変わる所。

「スクイージング」・・・最大呼気位まで絞り出すようにやや強い圧迫。

 

定義は上記の様になるのですが、これだけみると「スクイージング」の方が強い圧迫ではないかと思われます。辞書的にも「スクイージング」の「スクイーズ(squeeze)」は「絞り出す」といった意味合いもありますし。

圧迫の程度が強ければ、患者さんが「痛み」として感じる可能性が高かったり、「無気肺」や「胸郭損傷」等のリスクが高くなってしまいます。

そのため「スクイージング」をされる方には、かなりのスキルが要求されると思われます。

 

 

 

呼吸介助 と スクイージングの違い④ (圧迫部位)

「呼吸介助」・・・胸郭全体を圧迫

「スクイージング」・・・痰の貯留している肺葉・肺区域に限局して圧迫

 

《各手技を実施している様子》

呼吸介助(上部)

呼吸介助(上部胸郭呼吸介助) 「呼吸理学療法標準手技」P93より引用改変

 

スクイージング(上部)

スクイージング(上葉) 「呼吸理学療法標準手技」P97より引用改変

 

上記写真は同じ上葉に当たる部分の排痰手技ですが、「呼吸介助」は胸郭全体を動かす様にするのに対して、「スクイージング」はまさに部分といった感じ。

 

「呼吸介助」も「スクイージング」も胸郭の生理学的な運動方向に動かすのは同じですが、「スクイージング」の様に胸郭の一部を圧迫しながらも、胸郭の生理学的な運動方向に動かすのには個人的に難易度が高いと感じています。

 

胸郭の一部を圧迫しつつ胸郭の生理学的な運動方向に動かせなければ、患者さんの「痛み」に繋がりやすいではないか、と。

「痛み」を生じてしまうと通常の胸郭運動ではなくなってしまいますし。

 

「呼吸介助」も全体を動かすといっていますが、「上部胸郭」と「下部胸郭」に分けて圧迫を加えるので、厳密に言えば全体というわけではないのですが、こちらの方が難易度的には易しいと思います。

 

 

 

呼吸介助 と スクイージングの違い⑤ (目的)

 

「呼吸介助」・・排痰、呼吸困難感軽減

「スクイージング」・・・排痰

 

「スクイージング」は排痰に特化しているのため、上記の様な違いが観られます。

もちろん「スクイージング」も副次的に呼吸困難感の軽減が観られる場合もありますが主目的ではありません。

 

ぼくは臨床では、運動に対する忌避(嫌な感じ)を少しでも感じない様にしてもらうため、運動後速やかに呼吸困難感を軽減してもらう目的で「呼吸介助」をする事が多いです。

「呼吸介助」をする事で、患者さんの呼吸に要する酸素消費を少なくする事ができるためです

 

特にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんにする事が多いのですが、下の表の様にCOPDの患者さんって息をするだけでもかなりの酸素を消費しています

運動時は尚更ですね

A12

Hernny L.R:Journal of Applied Physiology 25:21-27 .1968 より引用

 

特にCOPDの患者さんは歩行などの有酸素運動でも無酸素運動になりやすいため、運動後にも関わらずSpo2が低下したりする事があるんです(= 酸素負債といいます)

また低下しなくてもSpo2の回復が遅れたりする訳なんですね

それを速やかに回復させるため(=息苦しさを軽減する)ために「呼吸介助」をするんです

 

運動するの嫌じゃ!、と思われたらマズイですから速やかに息苦しさはとってあげるべきだと思います

 

呼吸介助(座位)

座位での呼吸介助 「呼吸理学療法標準手技」P94より引用改変

 

患者さんが運動後に休憩する時は椅子座位が多いのですが、座った姿勢で行いやすい手技が「呼吸介助」にはあるためなんですけどね。

 

 

 

呼吸介助 と スクイージングの違い⑥ (ポジショニング)

「呼吸介助」・・かならずしも排痰体位ではない

「スクイージング」・・・排痰体位で行う

 

これも「スクージング」が排痰に特化しているためだと思われます。

もちろん排痰体位で「呼吸介助」をしたらいけない訳ではありませんし、ぼくは排痰目的の時にはできるだけ排痰体位で「呼吸介助」する様にしています。

 

排痰体位については、以前にまとめた以下の記事の体位ドレナージの所を参照してください。

下の方に書いてあります

楽な肺理学療法②( 訪問看護師さん対象: 吸引)

 

 

 

 

 

まとめ

「呼吸介助」と「スクイージング」には結構違いが多いという事が分かっていただけたかと思います。

患者さんや自分にあった手技を選択して使い分けられたらいいかもしれません。

ぼくの個人的な意見としては、患者さんのリスクの低さ、難易度、また汎用性の高さから「呼吸介助」をまず学ばれることをオススメします。

 

 

関連リンク

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