「筋持久力」と「全身持久力」との違いはわかりますか?(呼吸リハビリテーション⑩)

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前回「手足の筋力をつけましょう!」といことで骨格筋トレーニング(筋力・筋持久力トレ-ニング)について話をしました

今回は3の「全身持久力をつけましょう!」について話をしていきたいと思います

 

 

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「全身持久力」の定義

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「全身持久力」の定義は、全身の大きな筋肉を使ったダイナミックな運動を、一定のリズムで長時間行うことのできる能力、とされています

「全身持久力」を鍛える事の効果として、身体の中に取り込む酸素の量を増やす事ができるため、直接的に呼吸困難感の軽減に役立ちます

その全身持久力を鍛える運動の事を「全身持久力トレーニング」といいます

 

 

 

で、その「全身持久力トレーニング」で一体何を鍛えているのか?と疑問に思われる方も多いと思います

前回の「骨格筋トレーニング」の所で「筋持久力」というのがありましたし、名前も似てるし同じじゃね?、と思われるかもしれません

 

 

そのあたりを簡単に説明していきます

ワッサーマンの歯車

YUMENAVi様より引用・改変

 

上の図は循環器の分野でよく出る「ワッサーマンの歯車」と呼ばれるものです

持続的に運動をするのに必要なエネルギーは、この3つの歯車「肺」 「心臓・血液」 「骨格筋」 )が回り続け、骨格筋内のミトコンドリア内でATP がADPになる時に生み出されます

そのため歯車の一箇所でも動きが悪くなると、全体に影響を与え、持続的な運動が難しくなります

そんなイメージでこの歯車を捉えてもらうといいじゃないでしょうか

 

この3つの歯車がスムースに回れば回るほど、身体に取り込む酸素の量が増える事を意味しています

取り込める酸素の量が増えれば、当然患者さんの呼吸困難感の軽減にもつながります

 

 

前回の「骨格筋(筋力・筋持久力)トレーニング」というのはこの図の1番左の歯車を大きくするようなトレーニングです

歯車3

 

「骨格筋トレーニング」によって歯車が大きくなるため、少ない酸素(あるはOでも)多くの仕事(運動)をするができます

しかし「骨格筋トレーニング」では他の2つの歯車(「心臓・血液」と「肺」)からの酸素の供給を考慮していないため、長時間の運動できません

 

そこで今回の「全身持久力トレーニング」というのは、1番左の「骨格筋」だけではなく、骨格筋の歯車まで酸素を運ぶ「心臓・血管」や「肺」にも焦点を当てたトレーニングとなります

そのため「全身持久力トレーニング」は「心肺トレーニング」という名前でも呼ばれています

 

それが「筋持久力」と「全身持久力」の大きな違いとなります

 

「 心臓リハビリテーション必携 」という本のP181に「全身持久力トレーニング」についてわかりやすい定義が書かれていたので紹介します

 いわゆる(全身)持久力トレーニングは循環器疾患の運動療法の基本であり有酸素運動である。これは循環器系に過度の負荷をかけず、少なくとも1回30分以上の持続が可能で、代謝・内分泌系に進行性の変化を惹起しないレベルの運動であり、生理学的にはAT(無酸素性作業閾値)レベル以下の運動強度である。ATレベル以下の運動の特徴は、①長時間持続する事が可能、②疲労物質である乳酸の持続的上昇はなく、アシドーシスは起こらず、③血中カテコラミンの著しい増加はなく、④運動強度に対する心機能の応答は保たれているなどの特徴がある。さらに心疾患患者ではAT以上の運動でEF(左室駆出率)の低下をきたす例も多い。

 

どうでしょう、何となく違いがわかったでしょうか?

 

 

全身持久力トレーニングの種類

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主に足の運動では、歩行、踏み台昇降運動、自転車エルゴメーター、トレッドミルなどがあります

主に手の運動では、上肢エルゴメーター

 

エルゴメーターはペダルを漕ぐものですね

足で漕ぐのは「下肢(自転車)エルゴメーター」、手で漕ぐのは「上肢エルゴメーター」といいます

上肢エルゴは心臓リハビリテーションが行われる病院によく置かれていますね

 

ちなみに下の写真は僕が作った自作上肢エルゴ

和歌山県立医大のT先生に作り方を教えて貰いました(著作権はT先生にあるので注意)

Image055

負荷は患者さんの前腕に重錘ベルトを巻いて調整

 

 

トレッドミルとはこんなの

スポーツジムでお馴染みのマシン

treadmill

https://optimum-fitness.net/how-to-go-from-a-walk-to-a-run-on-a-treadmill/  より 引用

 

 

オススメの全身持久力トレーニング

全身持久力トレーニングには上記の様にマシンを使ってするものもあるのですが、在宅でも気軽にできる運動という事で、今回は「 歩くこと 」について説明していきます

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おススメする利点としては、普段の日常生活で頻回に行う動作であり、トレーニングのためのトレーニングとならない事や、特別な道具を使用しなくて気軽に始められるためです

 

 

COPDの患者さんが歩く際の注意点としては、

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口すぼめ呼吸の呼気に合わせて歩くという事ですね

1回歩くのに大体20分を目安に歩くと効果的と言われています

どの程度の速さで歩けばいいかという事なのですが、下の表(修正Borgスケール)で「やや苦しい」程度がよいと言われています

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僕ら理学療法士は、心拍数やフィールドテスト(6MD、SWTなど)から訓練中に目安とする運動強度を決めますが、患者さん自身の主観的な運動強度(上の修正Borgスケール)もよく使います

 

運動実施表

ちなみにこの表は僕が訪問リハ時に、COPDの患者さんに歩いてもらう際に使っている「運動実施表」です

 

これを持ち歩きながら記入していきます

「recover」は各パラメーター(Spo2、脈拍、息切れ、RR:呼吸数)の「開始後」の数値が、「開始前」の数値に回復するのに、どれくらい時間がかかったのかを記入します

回復が以前よりも早くなっていたりすると、治療効果が出てきているのかなぁと思ったりもします

 

セラピストの方は参考にしてみて下さい

 

 

コチラがその「運動実施表」(PDF:ダウンロード可)

 

 

 

運動後に気をつける事として

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屋外を歩いた後は「 うがい、手洗いをしましょう!」という事です

COPDの方はいわゆる風邪(上気道感染症)が原因で、病状が悪化してしまう事があります

今の時期はインフルエンザですね

これを急性増悪というのですが、これを予防する事がとっても大事になります

 

 

その理由を示したのが下のスライドになります

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病状の悪化(急性増悪)の回数が多ければ多いほど、生存率が悪くなっていますね

 

 

運動を継続して行うためのポイントなのですが、運動した後は簡単な日記を書くことをオススメします

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自分が頑張ってしたことが記録に残っていると、次回、運動しようというモチベーションアップにも繋がりますし、定期受診の際に主治医の先生に診てもらう事で、病状の把握をしてもらいやすくなります

 

また訪問リハ時の患者さんの感想からも、歩数計(万歩計)を身につけると「ちょっと歩いてみよう」という気にさせてくれる様です

ちょっとでも動けば歩数がカウントされるので、ゲーム感覚もあるのかもしれません

ただ、うっかり洗濯機で洗って壊してしまう方がいるので出来たら防水タイプのものがいいと思います

僕が使っている防水タイプのものです(その記事はコチラ

 

余裕があれば、日記に 血圧・ 脈 ・ Spo2(経皮的酸素飽和度) が記載されていれば最高ではないでしょか

最近は電子血圧計やSpo2を計る機器(パルスオキシメーター)も安価(1万円未満)になっていますし

特にパルスオキシメーターは10年前は安くても10万以上していたのでビックリです

 

 

運動中、急に息苦しくなった時の対応の仕方についてです

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パニックコントロールともいいます

 

まずは屋外で息苦しくなった時の対応なのですが、

スライドの図の様に手を膝の上に置き、前かがみの姿勢になると、腕に繋がっている筋肉を呼吸補助筋として使う事ができるので呼吸が楽になりやすいです

息苦しくなると、息を吸おう吸おうと頑張ってしまいますが、まず肺の中の空気を出さないと空気が入らないため、まずはしっかり息を吐くことを意識してみて下さい

 

 

屋内の場合では、クッションなどが使えると思いますので下のスライドの様にポジショニングをとるといいと思います

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また前に話しました様にあお向けの姿勢(仰臥位)というのは、横隔膜の働きを悪くしたり、機能的残気量を少なくしたり、静脈還流量が増えたりして、息をするのが余計にしんどくなる場合があります

その場合はクッションなどを使って上の図の様なファーラー位シムス位などを取ることをオススメします

 

 

最後に医療従事者向けに、患者さんに運動療法(骨格筋トレーニングや全身持久力トレーニング)をしてもらう際のコツを紹介して終わります

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運動負荷試験やフィールドテスト、心拍数などから、患者さんに適したと思われる運動強度を求める事はできます

その値を患者さんにゴリ押ししてしまうと、結構きつい運動となるため、運動を嫌がってしてくれなることがあります(・_・;)

そのため医療従事者である僕らは、患者さんに適した運動強度は頭に入れつつ、患者さんのモチベーションが下がらない様に気をつけなければなりません

病院なら患者さんがお客さんなので、こちらの言う事を結構聞いて頑張ってくれるのですが、在宅では僕らがお客さんです

生殺与奪は患者さんが握っているので、モチベーションが上げられなかったらしてくれません

当然自主練習も

 

本当に……難しいMAJIDE。

 

なので上のスライドにも書いたのですが、「患者さんが運動を楽しむ事ができる強度から開始」したり、「リハビリの効果を実感できるような関わりが大事」になってくるのではないでしょうか?

効果を実感できるように修正Borg、recover時間の短縮など数字に残して、その変化を患者さんに伝えてあげる事も必要ではないかと思います

 

 

最後に

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今回、「息苦しさがあったらどうなるの?」という事で、主にCOPDについて話した後、その「息苦しさを軽減するために具体的にどうしたらいいのか?」という事で、呼吸リハビリテーションなどについて話をしてきました

話の中でもいいましたがCOPDは息苦しさの原因の1つにすぎません

ひょっとしたら心臓の病気などが出ているのかもしれません

なので、おかしいな、と思われたら主治医の先生の診察を受ける事をお勧めします

 

 

これで終わろうと思います

また今回のスライドの内容で「この辺がおかしいのではないか」、や「ここをこう言った方が分かりやすいのではないか」というご指摘があればかなり喜びますので、よろしくお願いします

僕が思う呼吸リハビリテーションについて長々と書かしていただきましたが、最後まで見ていただきありがとうございました

何かの参考になれば嬉しく思います

 

 

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