息苦しい動作をする時のコツ(呼吸リハビリテーション⑥)

「息苦しさ」を軽減する方法の1つとして「呼吸リハビリテーション」があります

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前々回は、その中でも①の「呼吸の仕方を工夫する」ということで「口すぼめ呼吸」「腹式呼吸」の指導方法などについて話をしました

その中で「腹式呼吸」を指導すべきかどうかは打診で判断しましょう!という事で前回打診方法についての話もしました

そこで今回は 「息苦しい時の動作のコツ」 について話していこうと思います

 

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息苦しい動作は?

そもそも「息苦しい動作」というものにはどんなものがあるのでしょうか?

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まず1番目としては、腕を挙げる動作

なぜ息苦しいかというと、腕を挙げるためには腕がくっついている胸郭(体幹)が安定しないと腕が挙がりません

胸郭を安定させるというという事は、胸郭の動き、つまり呼吸を抑制してしまうため、息苦しくなっていしまいます

 

また呼吸困難感の強い方は、腕を動かす筋肉を呼吸補助筋として使っている方がいます

そのため呼吸の補助として使っていた筋肉が、腕を挙げることに使われて呼吸目的で使えなくなるため、息苦しさを感じやすくなってしまう訳です

 

腕を動かす筋肉が呼吸に使われると言う事を説明してみます

パニックコントロール

腕を動かす筋肉は、腕と体幹(胸郭)をつないでいます

通常は体幹の方が固定されるので腕の方が動くのですが、図のように椅子の背などに腕を乗せておくと、腕が固定されため、体幹(胸郭)を動かす事ができます

体幹(胸郭)を動かすという事は呼吸運動でもあるため、腕を動かす筋肉を呼吸に使うことができるんですね

とっても効率が悪いですが、息切れの強い方は効率どころではないので、自然とこのような呼吸の仕方をしている方もいます

 

 

息苦しい動作には、まだまだありますよ

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当然といえば当然なのですが、排便する際にいきんだり、洗顔したりする際など、息を止めるような動作です

息をしない訳ですから、息苦しい訳です

 

 

まだ他にもあります

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3番目は靴下やズボンを履く時の様にお腹を圧迫する動作です

腹部を圧迫することで、胸の動きを制限してしまうため息苦しくなります

 

また腹式呼吸の時、吸気の際には内臓が横隔膜に押されてお腹がポッコリなりますね

そのお腹のポッコリがこういった動作の際にはポッコリできない⇒ 腹式呼吸しにくい⇒ 息苦しいとなる訳です

 

 

息苦しい動作をする時のコツ!

では、以上の息苦しい動作の時にどうしたらいいのか、そのコツを説明していきます。

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簡単にいいますと、次の1~4になります

1.主に息を吐く時に動く

2.動作の途中で休憩する

3.動作の方法自体を変える

4.環境を変える

それぞれについて詳しく説明していきます

 

 

 

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息苦しさを軽減するコツとして、①「息を吐く時に動く」という事が挙げられます

基本的に息を吸う時は、横隔膜が収縮して胸腔内が陰圧となり空気が肺に入ってくるのですが、息を吐く時というのはその横隔膜が緩んで空気が外に出ていきます

横隔膜が収縮する時には酸素(エネルギー)が使われますが、緩む時には酸素は使われません

つまり酸素を使わない息を吐く時に合わせて動くと全体的な酸素の消費が少なくて済むわけです

 

またもう一ついい効果があります

それば口すぼめ呼吸の吐く時に動くという様に動作を制限する事で、まとめて動く量が減る訳ですから、時間あたりに消費する酸素消費を少なくできるという事です

今回はCOPDなど閉塞性障害のある患者さんについて話をしていますが、間質性肺炎など拡散障害のある患者さんに対しても、僕は有効ではないかと思っています

この「吐く時に動く」ということをしてもらって、少しでも血流をゆっくりさせることで、呼吸困難感軽減を図れたことがあるからです

 

 

ちょっと脱線しましたが話を戻します

ちなみに歩行を例に「息を吐く時に動く」を説明していきます

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口すぼめ呼吸をして、息を吸う時にはあんまり動かず(歩行スピードを落として)、息を吐く時に動く(通常の歩行スピードに戻す)という歩き方になります

ちょっと面倒くさいと思われるかもしれませんが、COPDの患者さんにこの歩き方をしてもうと呼吸困難感が軽減する場合が多いです

6分間最大限歩いてもらうという検査(6分間歩行テスト:6MD)があるのですが、このやり方で歩いてもらうと1.5倍の距離を歩けた方もいます

 

 

なぜ息を吐く時に動くと楽なのか、という事を数字的に説明します

 

以前腹式呼吸の説明の所でも使ったスライドを再掲

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通常、僕らは息を吸う時に酸素を使います

COPDの患者さんは上の表の様に呼吸だけでかなりの酸素(35~40%も)を使っているので、酸素の余裕が殆どない状態なんですね

そのため酸素を使わない息を吐く時に合わせて動く事で、酸素を節約しましょうということです

 

 

では今度は2番目以降の説明をしていきます

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では、②「途中で休憩」という事を説明していきます

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COPDの患者さんの中には息苦しくなってくると、早く終わらせてしまおうという事で一気にしてしまう方がいます

そのため一気にした後、ひどい息苦しさから動けなくなってしまう場合があります

実は動作中にちょっとでも息苦しさを感じた時に、一度動作を中断して息を整えてから再開する方が、息苦しさの程度が少なく行えます

また一気にその動作をしてしまうと言う事は、動作自体がになってしまうことが多いです

そのため二度手間になってしまったり、移動を伴なう場合だと転倒のリスクを増やしてしまったり、などいい事はありません

 

 

 

3番めのコツとしては、「動作の方法自体を変える」ことです。

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上のスライドを例にあげてみると、いつも着替えは立ってしていたのを、椅子に座ってしてみましょう、という事です

息苦しさは立つよりも座る方が少なくて済みますし、座って着替えた方が酸素の消費を節約できます

 

 

最後4番めのコツとしては「環境を変える(=環境調整)」ということです。

この中には住宅改修など大掛かりなものも含まれますが、1つ前のスライドにも書いていますが、着替えを台の上に置いてすぐ手の届くようにする、というのも立派な環境調整です

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上のスライドでは洗濯物を干すといった家事動作での環境調整方法を示しています

 

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通常洗濯物を干す時は、物干し竿自体が高い位置にあるため、腕を挙げて洗濯物を干さないといけません

前のスライドで腕を挙げる動作というのは、胸の動きを制限するので、息苦しい動作ということを言いました

それを避けるために、物干し竿自体を低くすることで腕を挙げなくて済むようにするわけです

また洗濯カゴが低い所にあったら、洗濯物を取るときにしゃがまなくてはなりません

これも結構しんどい動作なので、椅子の上に洗濯カゴを置いてしゃがまなくても洗濯物をとれる様にします

 

住宅改修の様な大掛かりなものではなく、椅子などちょっとしたものを使って環境を変えることで、息苦しさを軽減できるってことです

素敵ですね

 

 

僕の事例を紹介

ここで僕が経験した動作時の工夫でうまくいった患者さんの例を挙げます

入浴

この患者さんは在宅酸素を導入していた方なのですが、以前は入浴は大好きだったそうなのですが、僕が介入した時には息苦しくで大嫌いになっていた方でした(・_・;)

 

 

「入浴」というのは、ADLの中で息苦しさNo.1じゃないかと僕はかってに思っています

在宅ケア白書2013の日常生活の息苦しさの中で、入浴動作が最大の息苦しさ(修正Borg:10)とあげている方が結構いてますし…

在宅ケア白書(入浴時の息苦しさ)改

 

在宅ケア白書2013より抜粋

 

 

その入浴動作を細かく観ていくと、

①部屋から脱衣所まで移動して、②服を脱いで、③湿気の多い(息苦しさ↑)洗い場に行き、④浴槽に移乗して、⑤浴槽に浸かる(静水圧増加に伴ない息苦しさ↑)、⑥洗い場に出て洗体、⑦浴槽へ移乗、⑧浴槽に浸かる、⑨脱衣所にいったら身体を拭き、⑩着替え、⑪部屋まで戻ってくる

 

と 息苦しい動作の連続です

 

動作時の工夫で上手くいった方は、1つの動作が終わったら動作を一端止めて一息ついてもらったり、動作中は口すぼめ呼吸の呼気に合わせて動いたり、洗い場から出てすぐ身体を拭くのはしんどいので、バスローブを引っ掛けた状態で脱衣所で椅子に座って一息ついてから部屋に戻るなど、動作を省略する(動作方法を変える)ことで、修正Borgが最大10から4~5程度まで下げる事ができました (≧▽≦)

 

 

バスローブは、体を拭くという動作を省くことができるので非常にオススメです

また僕の住んでいる所は「タオル」で有名な「今治」なので、特に今治製のバスローブをプッシュ!

 

次はこの様な息苦しい動作中に僕ら医療従事者はどの様に評価していったらいいのか、について話を進めていきたいと思います

つづきはコチラ ⇒ 息苦しい動作の評価の仕方(医療従事者向け) 

 

 

 

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