聴診の話⑤(肺区域・ランドマーク・目印)

前回は、そもそも肺でなぜ音が生じるのかについて話しました

 

今回はそれぞれの肺音についてみていきたいと思います

これから説明する、いろんな肺音で痰の有無を推測してもらったらと思います

a1

 

 

 

正常呼吸音

肺胞呼吸音

sasa 

吸気に主に聴取され、柔らかい音で、吸気と呼気との切れ目(ポーズ)がないのが特徴です

吸気と呼気では吸気の方が長く聞こえます

 

 

音声を実際に聞いてもらうのがよいと思うので、You Tubeに動画がupされていたので紹介します

この動画では0:30あたりで紹介されている「vesicular sounds」が「肺胞呼吸音」にあたります

 

聴診できる場所はこちら

image-0042

前面は胸郭の端の方で、後面は肩甲下角付近になります

ちょうど病変の起こりやすいS6、S10あたりになります

 

肩甲骨下角 |

 

肩甲下角は手を後ろに組んでもらうと、肩甲骨の下の方でボコっとでてくる骨の出っ張っている部分です

This by Tinrocket 1.0.2 (101) ???????? |

ちょうど肺内の音がよく聞こえる部位や手術の時に侵入部位として有名な聴診三角付近でもあります

 

 

気管呼吸音

さささ

先ほどの肺胞呼吸音と比べ、呼気に主に聴取され、硬調な音がし、吸気と呼気との間に切れ目があるのが特徴です

 

音声は先ほど紹介した動画で紹介されています

この動画では1:00あたりで紹介されている「Bronchial Sounds」が「気管呼吸音」にあたります

 

聴診できる場所はこちら

image-0044

頚部気管直上になります

 

 

気管支肺胞呼吸音

肺胞呼吸音と気管呼吸音を足して2で割ったような音?

だだだ

特徴も先に紹介したは2つの音の中間ですね

ただここで重要なのは、先ほど肺胞呼吸音が聞こえるとされる場所で、この気管支肺胞呼吸音や先ほどの気管呼吸音が聴取された時です(気管支呼吸音化といいます)

そういう時というのは肺炎肺水腫などの病変が起こり肺に通常よりも多くの水分が溜まってしまい、音の伝わりがよくなっている可能性があります

こういう音の変化は、画像所見よりも早く出現すると言われています

 

音声は先ほど紹介した動画で紹介されています

この動画では1:30あたりで紹介されている「Bronchovesicular Sounds」が「気管支肺胞呼吸音」にあたります

 

聴取できる場所はこちら

image-0046

胸骨上や肩甲骨の間になります

 

 

副雑音

今度は健常な人では聴取できない音(= 副雑音)についてみていきましょう

痰がある時の音はコチラになります

a2

それらの音を合わせてラ音というのですが、そのラ音はさらに 断続性ラ音 と 連続性ラ音 に分類されます

それぞれ詳しく説明していきます

 

 

荒い断続性ラ音(coarse crackles:コースクラックル)

image-0049

比較的太い気管支の壁にある痰が気流により破裂する時の音で、吸気前半に多い傾向にあります

 

心不全が進行して肺が水浸しになっている患者さんや、誤嚥でひどい肺炎になってしまった患者さんから聴取されることが多い印象です

 

後で説明するrhochi も痰が原因で生じる場合がありますが、咳をするとrhochiは音に変化がみられやすいのに対して、coarse cracklesは変化が少ないのが特徴です

 

音声はこちらの動画の0.33あたり

 

このスライドでは太い気管にある痰が破裂する時の音と記載していますが、ぼくの臨床では確かに痰は溜まっているけど、吸引が可能な主気管支レベルまではまだ上がってはいない、と考える事が多いです

 

ハッフィングができる様な患者さんなら「長めにハ~~」と言ってもらったり、それが難しい患者さんであれば動いてもらったり動かしたりあるいは呼吸介助などをして、少しでも痰が中枢気道に上がる様な事をします

そんな事をしているとしばらくして、coarse cracklesから rhochiに音が変わってくる事が多いです

 

音がrhochiに変わってきたら

「もうちょいで痰が出てきそう」 という事で、患者さんに咳をしてもらったり、咳が出来ない方は「短めにハッ!ハッ!」とハッフィングをしてもらったり、十分な自己喀出が難しそうであれば咳嗽やハッフィングに合わせて咳嗽介助に入ったりします

それでも困難であれば吸引という事が多いです

 

ハッフィングについてはコチラの記事をどうぞ

自分で痰を出しやすくする方法(ハッフィング)についてまとめてみた

 

 

 

 

呼吸介助についてはコチラ

呼吸介助についてまとめてみたよ!

 

 

 

細かい断続性ラ音(fine crackles:ファインクラックル)

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呼気時に閉じていた細い気管支吸気時に開いた時に生じる音です

前胸部より背側で聴取されやすいです

 

音の発生の機序については、この様に細気管支が主と説明していますが肺胞の間質から音が発生しているのではないかという方も中にはいます

半坐位(ファラー位)や座位で、下葉部分で聴取されることが多いです

 

 

音声はこちらの動画の0.23あたりで流れますが、ちょっとわかりずらいですね

ナースのためのCDによる呼吸音聴診トレーニング (NURSING) に付属しているCD音源はもっとわかりやすいので、はっきり聞きたい方はそちらをオススメします

 

ぼくが住んていいる今治は大島石の採掘・加工が盛んな影響で、石の粉塵を吸って間質性肺炎(塵肺:じんぱい)になってしまっている方が多く観られます

病期が進んでくればくるほど、前からも結構聞こえてくる印象です

 

痰関係ではこの音との関係は薄い様に感じますが、肺炎との関係でいいますと炎症が収まり少し改善が見られてくると、coarse cracklesが減るのとは反比例して、この音が聞こえ始める事が結構あります

 

 

 

高音声連続性ラ音(Wheeze:ウィーズ)

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細い気道が閉塞している時に生じる音で、呼気中心に聞こえます

本当に笛がなっている様な音です

喘息発作などによって細い気道が狭くなった時によく聴取されます

 

音声はこちらの動画の1:00あたり

このスライドでは痰でもでますよ、と臨床では少ない印象です

 

 

低音性連続性ラ音(Rhonchi:ローンクス)

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太い気道が閉塞した時に聴取される音で、呼気・吸気ともに聴取されるのが特徴です

この音は痰がよく溜まっている患者さんを聴診すると聞こえるとっても重要な音です

 

痰の場合は、咳をしてもらったり体位を変えると音が変化する場合があるので、喘息等による気管の狭窄との判別に使えると思います

 

音声はこちらの動画の1:15あたり、ちょっとわかりずらいですね…

ナースのためのCDによる呼吸音聴診トレーニング (NURSING) はもっとはっきり分かるので、興味のある方はそちらを是非参考にして下さい

著作権の関係でupはできません(・_・;)

 

また痰が吸引が可能な主気管支レベルまで上がってくるとこの音がよくします

なのでこの音を聞こえてくると「もうそろそろ痰がでてくるぞ!」と判断して、患者さんにをしてもらったり、咳が出来ない方は「短めにハッ!ハッ!」とハッフィングをしてもらったり、十分な喀出が難しそうであれば咳嗽やハッフィングに合わせて咳嗽介助に入ったりします

それでも困難であれば吸引という流れですね

 

またこの音は 「ちゃんと痰が上がってきているのか」 や 「主気管支レベルの痰がちゃんと取り切れているのか」 がある程度分かるため、肺理学療法や吸引の前後の効果判定の1つに使えます

 

 

 

 

吸気性連続性ラ音(squawk:スクウォーク)

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この音は聞き慣れない方も多いかもしれません

 

細い気道が閉塞した際に生じる音で、Wheezeが呼気に聴取されるのに対しこちらは吸気に聴取されるのが特徴

Wheezeよりも高音です

連続性ラ音に分類されていますが、音の出る時間は短い(100msec以下)ので断続性ラ音に分類されることもある様子

 

荒い断続性ラ音(coarse crackles)に続いて聞こえることが多く肺炎の初期によく聞こえる音として知られています

可能性として10~15%だそうです

そのため特に訪問場面では聴き逃してはならない音です

この事を知っていたら訪問場面で家族さんに「ちょっと変な音がしているので、調子が悪くなったらすぐ連絡くださいね」と声掛けが行えたり、他の所見を合わせてみてこれば明らかに悪くなりそうと感じたら病院受診をすすめる事もできますし

 

 

音声はこちら

 

 

 

 

今まで肺音についてザーと述べて来ました

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面白いですね

音で色んな事が推測できちゃう訳です

 

っっっq

ここまで2の「どんな音が聞こえるのか」について説明してきました

今度は3の「どのタイミングで聞こえるのか」について説明していきます

 

 

 

どのタイミングで聞こえるか

先の呼吸音の説明で、ちょろっと言いましたが、音によっては呼気の時によく聞こえる音(Wheeze)、吸気も呼気にもよく聞こえる音(Rhonchi)、吸気の時によく聞こえる音(fine crackles)などがあったかと思います

それぞれ、どのタイミングで出やすいかある程度決まっているので、そのタイミングから音を分類しましょう、という事です

こお

ちなみに呼吸は、空気を吸っている時(吸気相)と、息を吐いている時(呼気相)、その間のポーズ相からなります

ポーズ相ってなんやということになるのですが、呼吸運動が限りなくない時間帯だと思って下さい

 

 

っd

各相でも始めの方に聞こえる早期 と 後の方で聞こえる後期 に分かれています

 

自分が聞いている音が一体、どのタイミングで出ているのか分かってくると、音の分類をする上でいいヒントとなったり、カルテに記載したり、同僚に伝える時にも伝わりやすくなります

(例)

・吸気の始めの方でAの音が聞こえる → 吸気早期にAが聴取

・呼気の終わりの方でBの音が聞こえる → 呼気後期にBが聴取

・吸気も呼気もCの音が聞こえる → 全相に渡ってCが聴取

 

 

 

そして一般的な聴診手順

koko

基本的に聴診は座位で行われます

肺の上の方から下の方へ、左右の比べながら、異常があるなしを意識しながら聞いていきます

 

どの部位を聴診していくかなのですが、肺を縦に3分割(上肺野、中肺野、下肺野)にして、前面後面を左右1ヶ所ずつ計12ヶ所、それに側面の2ヶ所を合わせて、合計14ヶ所を聞いていきます

ただこの上肺野、中肺野、下肺野はレントゲン写真上での分け方なんです

そのため上肺野は上葉ではなく、中肺野も中葉でもなく、下肺野も下葉でない事に注意が必要です

 

 

ちなみに上・中・下肺野 と 肺区域の対応は以下の様になります

っっっっs

 

上肺野・・・上葉のS1~S3

中肺野・・・上葉のS3 、 下葉のS6

下肺野・・・中葉のS4、S5  と 下葉のS7~10

 

 

 

聴診の流れを図で表すとこんな感じ

あ

 

ええ

 

っっっd

 

後面の中肺野にあたる部分が狭まっているのは、肩甲骨周りには筋肉が分厚くで聞こえにくいからなんです

肩甲下角の少し内側は筋肉が薄くて聞こえやすいという事でこの付近を聴診するようです(聴診三角

 

ちょうど病変が起こりやすいS6、S10付近なのがいいですね

 

 

 

5

大雑把に聴診していって、異常がみつかれば詳しくみるという流れです

 

異常(副雑音)が見つかった場合には、その音が連続音であるか断続音であるかを区別して、音のタイミングなどから副雑音のどの音かな?と推測します

患者さんの姿勢(体位)や咳などしてもらって変化がみられる場合には、副雑音の原因を絞る事ができます

また聴診以外のフィジカルアセスメントや、検査結果なども合わせて考える事で、更に副雑音の原因を考えていきます

 

 

聴診のスクリーニングにいい部位

聴診する際には、上記の様に聴取するのが理想なのですが、時間がなくて困難である場合など、スクリーニングするのにいい部位があるので紹介します

 

下葉のS6、S10 などは誤嚥や臥床が長い事で生じる沈下性肺炎など病変がとっても生じやすい部位であるので、ここを聴取してみる事をオススメします

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  ランドマークとして分りやすいのは肩甲骨の下角(かかく)

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 肩甲骨の下角は肩甲骨の下の出っ張っている部分

両方の肩甲骨の下角を線で繋いでもらってその上がS6、その下がS10という感じで覚えてもらってもいいと思います

ただ呼吸困難感が強い患者さんなどでは、呼吸補助筋である斜角筋や僧帽筋などの筋緊張が強くて肩甲帯が常時挙上している方も多いので若干ずれはあるので注意して下さい

 

 

 もう1つは頚部です

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 STさんがする様な嚥下音を聴くわけではないのですが、肺の中で生じた「ピュー」とか「グォー」などの閉塞音(連続性ラ音)は頚部まで音が伝わってくるので、ここで異常な音(副雑音)があるかどうかがわかっちゃう訳です  

頚部で変な音が聞こえたら、どこで生じているのか?と探していくと効率的かもしれません

 

 

 

音の場所を伝えたり書いたりする時の注意点

今まで細かい肺区域(S1~10)や上葉・中葉・下葉の位置などを話をしてきたのですが、カルテに書いたり同僚に伝える際の注意点があります

あっs

解剖学的な場所で伝えると言う事です

 

 

例えば、聴診した部位が肩甲下角などはっきりした名称がついている所なら、「右肩甲下角で~」などと、いう事ができるのですが、肩甲下角などのはっきりとしたランドマーク(目印)がない場所ではどう言えばいいのでしょうか?

 

そういう場合には、身体の横(水平)方向の位置 と 身体の縦方向の位置 の2つがわかれば、地図の経度と緯度の様に、相手に正確な場所を伝えられます

SA1辰野ゼロポイント捜索様より引用改変

 

横(水平)方向と縦方向の交わる所って一箇所しかないわけですから

 

 

あささ

 

 

上のスライドの縦線について説明します

いろんな名称のついた縦線があるんです

さささささs

ちなみに

前腋窩線…腋窩の前の縁を通る線

鎖骨中線…鎖骨の真ん中を通る線

肩甲線…肩甲骨下角を通る線  ets 

上記スライドで紹介した線以外にも「乳頭線」など色々あります

 

 

臨床では実際、聴診した場所はどう言われて(書かれて)いるのかといいますと

 

上記の様に解剖学的な場所で言うのが丁寧で理想です。しかし、実際は「一般的な聴診手順」の所で説明しました、「上肺野・中肺野・下肺野」で場所をいうDrが多い影響か、臨床ではその言い方・書き方が多い印象があります。

 

 

 

 

あとは聴診する際のちょっとしたコツ

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軽い閉塞性障害のある方は安静時では狭窄音(連続性ラ音)が聞こえない場合も多いのですが、深呼吸してもらうと聞こえる事があります

 

またRhonchiと紛らわしい音が舌が原因で出ていることがあります

舌根が沈下している場合ですね

そのため姿勢で舌の位置が変わると音がすぐ変わったりする事が多いです

 

 

 

まとめ

今回は私達医療従事者が排痰(体位ドレナージ)を行う上で必要な聴診を簡単に話をさせてもらいました

痰がたまっている場所(S1~10)が推測できて、どうしてその様な音に聞こえるのか、イメージしやすくなったでしょうか?

異常な音が出ている場所や音の種類などがわかれば、チームで情報を共有する事ができ治療やケアに繋がりやすいと思います

 

最後に、ここまでの内容は私というフィルターを通していますので勘違いや間違いも多いと思います

そのためご指摘やアドバイス等頂けると助かります

 

患者さんの安楽な排痰に繋がれば嬉しいです

長文を最後まで読んで頂き、ありがとうございました

 

 

 

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