地域住民の方に転倒予防の講義をしてみた!(地域住民の方向けの転倒予防の講義)
はじめに
昨日ステーションのある地区の地域包括支援センターの方から地域住民の方向けに転倒予防の講義を頼まれたのでさせて頂きました
今年6月に愛媛東予ブロックの訪問看護師さん対象にさせてもらった講義の内容をベースに、ややこしい所は省いて実技を多く含めましたものにしました
だいたい講義時間は1時間の内容です
今回の内容を更に詳しく知りたい方は、元となっているこちらの内容(1時間30分)をどうぞ
・転倒予防がなぜ重要なのか?(訪問看護師さん向けの転倒予防の講義①) |
元の内容を知っている方は、どの様に簡略化したのかがわかると思いますので面白いと思います
また実際に講義に使用した資料などもPDFで公開していますので、もし良かったら使ってください
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はじまりはじまり
今回、地域包括の方から転けるのを防ぐような話をして欲しいと言われたので、具体的にどの様な事をすればいいのかについて、実技を交えながら話していきたいと思います
ということで、スライドの様に今回のテーマは「転倒予防」です
副題には、段差は転倒の原因ではない、と挑戦的な事を書かしてもらいました
転倒といえば段差だから、一時期バリアフリーなどいわれていたんじゃないか? と思われる方も多いと思います
このへんの事も話の中で説明していきます
では、いきなり質問ですが、転ける原因はみなさん一体何だと思いますか?
どうでしょう?
少し心の中でいくつか挙げてみて下さい
当てたりしませんので心配しなくてもいいですよ
では、ぼくが幾つか挙げてみます
1番目は、始めの方に話した様に「段差」 は転倒の原因と考える方は多いと思います
また歳をとると転ばれる方も多いですから「歳をとること(=加齢)」 も転倒の原因になりそうですね
また歳をとると 「手足の力が衰える」 ので「筋力」も転倒の原因になりそうですね
立った時のバランスが悪くても転倒しそうですから「バランスが悪い」のも転倒の原因になりそうですね
なんだか転ける原因は沢山ありそうですね
では転倒する原因について、簡単に図にまとめてみたいと思います
転倒の原因
転倒の原因について簡単にまとめたのがこちらの図になります
向かって左の方から説明していきます
筋肉が減ったり、骨が脆くなる骨粗鬆症などで背骨がグシャとしゃげてしまったり、膝痛や股関節痛などの関節症などになってしまうと、筋肉や骨が変化する事で前かがみの悪い姿勢などになってしまうんですね
そんな状態になってしまうと、歩いたりバランスを取るのが難しくなっている所に、段差や坂道などの環境が絡んで転倒に至ってしまう事があるんです
このあたりは皆さん想像しやすいと思います
真ん中の「多病」って何や?と思われると思います
歳をとるとどうしても色んな病気と仲良しになってしまいます
そうなるとどうしても飲む薬が増えてしまいます
飲む薬が多くなると、薬どうしの相互作用 や薬の副作用で転けやすくなるんです
具体的にいいますと、薬の種類は問わないで5種類以上の薬を服用している方は、そうでない方に比べ転倒するリスクが2倍になると言われています
それでここで「 5種類以上 」と書いている訳です
厚生労働省のデータでも65歳以上の方の30%が5種類以上の薬を飲まれているというので結構な人がいるのではないでしょうか?
みなさんも飲まれていませんか?
ここで面白い話がありまして
ぼくはこの訪問看護ステーションで働いているというのもあるのですが、訪問看護師さんの協力で作用のカブっている薬などを見つけて医者と相談して薬を減らせたら、転倒リスクが40%も減らせたという海外のデータがあります
なので訪問看護師さんが現在関わっている方は少し相談されてみるといいかもしれません
そして1番右が認知症や脳梗塞や脳出血、そして加齢など
また糖尿病などによって手足がしびれ、歩いたり、バランスをとるのが難しくなり、そこに環境が絡んで転倒してしまう、という流れもあります
この様に簡単にまとめるだけでも、実に沢山の転ける原因があるんですね
この様に転倒する原因は沢山あります
すべての原因に対して対策をとれれば1番いいのですが、それは中々現実的ではありません
でも転倒の原因の中でも、転倒に対する影響力の大きいものとそうでないものがあると思います
その影響力の大きいものから対策をとるのが現実的ですね
その沢山ある転倒の原因の中での影響力の大小を調べた研究があるので、その結果を紹介します
それがコチラになるんですが、転倒に対する影響力の大きいものから順にいいますと、1番大きいのが「筋力低下」でその次が「バランス悪化」でその次が「歩行能力の低下」で、その次が「杖などの使用」になります
この杖なのですが、杖が悪いわけではなくて杖を使わざるを得ない様な身体機能の低下があるという事です
それぞれの右側にある数字について説明します
1番影響力の大きい「筋力低下」の右側にある 6.2 という数字なのですが、この数字が意味するのは筋力低下のある人はない人に比べて6.2倍転倒しやすいという事を示しています
結構すごいですね
なんか「筋力低下」が圧倒的です
はじめの副題の所でもいいましたが、転倒と言えば「段差」なのに、先程あげた転倒の原因の中に「段差」は1つもありませんでした
「段差」は転倒の原因にならないのでしょうか?
なぜ転倒のこの転倒の原因の中に「段差」が挙げられていないのか、その根拠を説明したいと思います
段差が転倒の原因とならない理由
それはこちらの研究結果が根拠になっています
この研究とは何なのかといいますと、厚労省からの委託で転倒の原因について鳥羽先生という先生が調べた研究によるものです
厚労省も転倒が原因で医療費を引き上げているという事には気づいていて、何とかして転倒を減らすために転倒をしやすい人とはどんな人なのかを調べたい、という所から始まった研究です
確か転倒のために使われた医療費は6000億もかかっているというデータもあります
その鳥羽先生の研究結果なのですが、転倒した人と転倒しなかった人の家の中の段差のあるなしで転倒に対する影響を調査した所、全く差がなかったそうなんですね
これが今回の副題に「段差は転倒の原因ではない」とぼくが書いた理由になります
先生の研究をまとめますと、本人が意識できるような段差は転倒の原因にはならないという事です
段差や階段などの障害物の事をバリアというのですが、そのバリアがないバリアフリーは、段差があっても乗り越えられないような本当に体が弱っている人が対象になるのではないかと、鳥羽先生の論文でも書かれていました
ぼくなりの解釈をしますと、転ける原因となるから段差を全てなくす様な住宅改修の様なバリアフリーにお金をかけるよりも、身体機能をよくするような事にお金がかけたほうがいいのではないか、ということを先生は言いたかったのではないか思います
確かに段差は転けるきっかけになるかもしれませんが、転倒に対する決定的な要因にはならない、という事だと思います
極論になるかもしませんが、アルツハイマー型認知症などでそこの段差があると意識できない方が、段差に引っかかって転けそうになった場面を考えてみましょう
もし転けそうになったとしても身体機能が高ければ、転けそうになっても立ち直る事が可能になるかもしれません
それで今回の転倒の原因には、身体に関する事ばっかりが入っているのではないでしょうか?
では段差は転倒の原因ではないし、環境に関する事は大事ではないのでしょうか?
そんなことはありません!
環境に対するアプローチも大事
実は環境も大事なんです
それば「段差」ではなくて「歩く所に障害物がある場合」です
さきほど紹介した鳥羽先生によると、歩く所、これをぼくらは「動線(どうせん)」とよんでいるのですが、そこに障害物があった際には、転倒するリスクがない場合と比べて3.8倍になる、ということが分かっているそうです
この写真を見てもらったら、と思います
こちらの写真はある方の寝室の出入り口なのですが、本人はスリッパを履くと転倒しやすいからという理由でスリッパを使わずすべり止めの靴下を使われています
バッチリです!
それはとってもいい事をされているのですが、おしい事に本人の部屋の出入り口に家族さんのスリッパが置かれています(・_・;)
この家族さんのスリッパが「歩く所に障害物」にあたる訳なんです
ただこういう場合はパパっと片付けてあげたらいいです
住宅改修が必要なわけではないんですね、気づいた時にちゃちゃっと片付けたらいいだけです
とっても素敵な事ではないでしょうか?
また違う事例の紹介なのですが、この様に歩く所にコードがゴチャゴチャしている場合ですね
これも立派な歩く所の障害物です
コード自体をなくす事は難しいのですが、何個もあるコードを100均にある「コードまとめ」で1つにすることができるんです
これで歩く所のある障害物の数を少なくする事ができます
こんなちょっとした事で転倒を予防するができます
ここでちょっと復習です
転倒の主な原因は何だったのか、皆さん覚えていますか?
転倒に対する影響力の大きなものから順に上げると、この様になるのですね
1番影響力の大きなものが「筋力低下」でした
なのでこの「筋力低下」を改善するような、ぼくのおススメの運動をこれから紹介します
でもおススメの運動と言われても、歳をとっても筋力がつくのだろうか?と思われる方もいてると思います
結論からいいますが、歳をとっても筋力はつきます
というか、歳をとっているヒトの方が筋肉が増えやすいです
その根拠となるのが次のスライドです
この棒グラフは8週間の筋トレでどのくらい筋肉の量が増えたのかをみたグラフになります
1番左が21歳から40歳の若者、真ん中が41歳から60歳の中年、1番右が61歳以上の高齢者になります
結果は非常に面白いもので、若者よりも高齢者の方が筋肉の量が増えています
この原因を考えてみると、若い人は仕事などで活動量が多いため筋量が高いレベルで維持されていたのに対して、高齢者は活動量が少ないため筋量が低いレベルであったのではないか、と思われます
もともと筋量が高い人が更に筋量を上げるのは難しいですが、低い人が筋量を上げるのは簡単なため、こういう結果になったのではないかと推察できます
でもね、高齢者の方が筋トレによる伸び代(しろ)が大きいのは確かな訳なんですね
という事で高齢者も若い人と変りなく筋力はつくという事です
筋肉を鍛えるということなのですが、身体を動かす筋肉というのは人間は400近くあるんです
どこの筋肉を鍛えたらいいのでしょうか?
その答えとなるのがこちらの折れ線グラフです
こちらのグラフは「年齢と体の各部分の筋量の変化」を表しています
20歳の頃の筋量を100とした時に、歳をとるに従ってどの様に筋量が変化するのかを示したのがこちらグラフになります
上の白い線が上腕前面でいわゆる力こぶの所にあたります、つまり手の筋量です
下の緑が大腿前面で、足の筋量を示しています
どうでしょう?両方とも歳をとっていくに従って下がってはいますが、下がり方が全然違いますね
手は比較的保たれているのに対して、足は右肩下がりになっています
昔の人はよく「老化は足から」と言いますが本当だった訳なんです
なので筋トレをするには、弱りやすい足の筋肉を中心に鍛える事をオススメします
では、これから足の筋トレについて話を進めていきたいと思います
筋トレ前にしてもらいたい2つの事
では実際の足の筋トレについて話を進めていくのですが、筋トレをする前にしてもらいたい事が2つあります
それは 「筋トレをしても良いか確認」 という事と、「筋トレ前には準備運動というか体操をしましょう!」 という事です
まずは①の「筋トレをしても良いか確認」について詳しく説明していきます
皆さんも色んな病気を持たれていると思います
病気によっては筋肉をつけるために筋トレをしたのに、逆に筋肉を減らしてしまう事もあるんです
しんどい思いをして筋トレした………本当に骨折り損ですね
そんな事もあるので運動をする前に、あなたの身体について1番よく分かってくれている「かかりつけの先生」にこういう運動をしようと思っているのだけれどしても良いかどうか、を定期受診の際にでも聞かれる事をおススメします
でも定期受診をつい最近したばっかりで次の受診まで結構ある場合や、運動の事を聞くためだけに病院にいくのも行きづらいと感じる方もいると思います
そういった場合に参考になる資料があったので紹介したいと思います
その資料は厚労省のHPから引用した資料になります
これを何で厚労省が出しているのかというと、厚労省も国民の運動不足(10年前に比べて1日あたりの歩数でいうと各年代1000歩減)が医療費を引き上げてしまっている事に気づいていて、何とか医療費を抑えようという事で運動する事を勧めているんですね
でも運動して病気になっちゃあかんという事で、いくつかの目安(= チェックリスト)を公開しているんです
今回みなさんに紹介するのは、そのチェックリストになります
そのチェックリストは2段構えになっていて、この「身体活動のリスクに関するスクリーニングシート」が問題なければ、次の「運動開始前のセルフチェックリスト」に進んで、これもパスできれば運動してもいいんじゃないか、という流れになります
こちらが「身体活動のリスクに関するスクリーニングシート」でこれが全て「いいえ」なら次の「運動開始前のセルフチェックリスト」に進みます
こちらが「運動開始前のセルフチェックリスト」です
15個もあって結構大変ですが、安全に運動するためですので1つ1つしっかりチェックしていって下さい
今まで筋トレ前にしてもらいたい事として、①の「筋トレをしても良いか確認」について話をしました
今度は②の「筋トレ直前に準備運動をしましょう!」について詳しく話をしていきます
準備運動をしましょう!っていう事ですが、その効果というか目的には「筋力や柔軟性を上げたり」、筋肉を温める事で筋トレをする際の「ケガを予防 」する事が挙げられます
では、どんな事をすればいいのでしょう?
それは、関節の動く範囲の8割り程度でリズミカルに繰り返し動かす動的ストレッチングという運動です
運動前のストレッチといえば、じんわり筋肉を伸ばすストレッチを思い浮かべる方が多いと思いますが、それとは全然違うものになります
なぜ従来のじんわり伸ばすストレッチではないかというと、10年前ぐらいからになると思うのですが、じんわり伸ばすストレッチをすると筋力発揮が落ちてしまうことが分かったからなんですね
なので現在、アメリカのスポーツ医学会の方でも運動前のじんわり伸ばすストレッチは推奨されなくなっています
一方、今回ぼくが紹介する動的ストレッチは上のグラフの様に、ストレッチをした後筋力発揮が増える事がわかっています
なので後から紹介する筋トレの際に、より大きな筋力を発揮していただきたいので今回ぼくは動的ストレッチを紹介する事にしました
では動的ストレッチって具体的にどのようにしたらいいのでしょうか?
とっても簡単ですよ
この様な運動をリズミカルに10回繰り返すだけです
それぞれについて詳しく説明していきます
動的ストレッチの ①「つま先あげ」
椅子に座って足先を上げたり下げたりします
この時に意識してもらいたい事としては、足を上げるだけでなく足を下げる方にもしっかり意識してもらう事です
足裏で床をしっかり叩くイメージでして頂けたらと思います
後は足をしっかり上まで上げきる必要はありません(8割程度)
こんな感じ
②動的ストレッチの 「膝伸ばし」
椅子に座って両足を交互に膝を曲げたり伸ばしたりをリズムよく繰り返します
座って両足をバタ足する様な感じです
両足をいっぺんにします
難しければ片足ずつでもいいですよ
この時意識してもらいたいのは、膝を伸ばすだけではなく膝を曲げる時にも力を入れる事です
また膝をしっかり伸ばしきらなくても構いません(8割程度)
こんな感じ
③動的ストレッチの「つま先立ち」
何かしっかりしたものをもって立った状態で つま先立ち⇒ドスン⇒つま先立ち⇒ドスンをりリズムよく繰り返します
ピョコピョコしている感じです
両足をいっぺんにします
しっかり最後までつま先立ちにならなくて構いません(8割程度)
意識して頂きたいのは、つま先立ちになるだけではなく勢いよく床に踵につける様にする事です
こんな感じ
④動的ストレッチの「足上げ」
何かしっかりしたものをもって立った状態で足踏みします
しっかり最後まで足を上げきらなくて構いません(8割程度)
単に足を上げる方だけを意識するのでなく、しっかり床に足を勢いよくドスンと踏みつける様に意識します
こんな感じ
これらが準備運動としてして頂きたい動的ストレッチになります
簡単でしょ
でもなぜこれがストレッチ?と思われる方も多いと思います
その詳細については以前に看護師さん向けに書いた記事に書いていますのでそちらをご覧ください
今回の講義で配った動的ストレッチ一覧(PDFファイル)
ここまでで、筋トレ前にしてもらいたい事である①と②の説明がやっとことさ終わりました(・_・;)
では足の筋トレついて話を進めていきたいと思います
これから足の筋トレについて細かい話をしていくのですが、筋トレをしている時に意識して頂くとより効果が高くなるポイントがありますので、まずその説明をします
筋トレ効果を高めるポイント
運動の強さ としては「少しきつい」と感じる程度をオススメします
運動の強さが弱ければ筋トレ効果は少ないですし、強すぎるのも筋や関節を傷める原因になってしまうので、この「少しきつい」と感じる程度がいいと思います
運動の回数 としては連続10回を休憩を挟んで2セットする事をオススメします
朝1通りして夕方もう1通りする様な感じでしょうか
週に2~3回、できたら毎日しましょう
毎日して大丈夫なん?と思われるかもしれませんが、今回ぼくが紹介する運動は筋線維を破壊するような筋トレではありませんので毎日していただいても大丈夫です
筋トレ中は息を止めない様にしましょう
息を止めてしまうと血圧がかなり上がってしまいます
そこで数を数えながら運動をすると、数を数えている間は息を止める事ができませんので数を数えながらする事をオススメします
できるだけゆっくり筋トレをしてみましょう
ゆっくり筋トレすると、筋肉から筋肉の成長を促すホルモンが出てきます
またゆっくり動くことで筋肉や関節を動かしすぎて傷める事も少なくなります
筋トレした後、筋肉がだるく感じるようでしたが本当に上手に筋トレできています!
ただ翌日までだるさが残る様でしたら運動が強すぎるかもしれないので、少し弱めたり回数を減らすなど加減してみてください
具体的な足の筋トレ方法
やっと足の筋トレの具体的な話になります
ではこれから足の筋トレについて具体的な話をしていくのですが、お年寄りの方は右上のスライドの写真にあるようなムキムキの70歳の方もいれば、ヒョロヒョロっとした70歳の方もいたりして、その筋力の個人差はとっても大きいんですね
この写真は極端過ぎですが…
なので今回、「筋力が弱い人向けの座ってできる筋トレ」 と 「筋力の強い人向けの立ってできる筋トレ」を紹介したいと思います
それで座って筋トレをするのか、立って筋トレをするのかの決め方は 「手すりなしで立ち上がれるかどうか?」 を基準に行います
では「手すりなしで立ち上がれなかった場合」の運動を紹介します
それは「座ってする運動」になります
座ってする筋トレ
それが座ってする筋トレは沢山あるのですが、ぼくはその中でもこの3つをお勧めします
それは①の「つま先あげ」、②の「膝伸ばし」、③の「椅子からの立ち座り」になります
こちらは今回講義で配布した資料(PDFファイル)
「あれっさっき出てきた動的ストレッチと同じものがあるやん!?」と思われた方は鋭い
運動の名前は同じなのですが、「動的ストレッチの場合」と「筋トレの場合」では全然やり方が違う のでそれを意識していただけると面白いと思いますよ
また全部するのは時間がないからこの中でもおススメなのを1つだけ選んでと言われたら、ぼくは躊躇(ためら)わず③の「椅子からの立ち座り」をお勧めします
なぜこの運動なのかというと、普段の日常生活の中で使う動作でもありますし、これが安全にできなくてベッド中心の生活になってしまう患者さんが本当に多いんですね
この立ち上がりが安全にできる事で動く機会が増えて、筋力が増える可能性が高くなるからなんですね
加えてこの動作は筋トレの王様と言われているスクワットにかなり似た動作であるため、下肢だけでなく体幹などの全身の筋トレにもなるんです
もちろん1番鍛えたい太ももの筋肉(大腿四頭筋)に対する刺激もかなり大きいですよ
では、それぞれの運動について見ていきましょう
①筋トレの「つま先あげ」
動的ストレッチの所でも同じ名前の運動がありましたが、全然やり方が違います
その違いも意識しながら見て頂けたら面白いと思います
こんな感じ
この「つま先あげ」は足を上げる筋肉である「前頚骨筋」という筋肉を鍛える運動です
この筋が弱いと歩く際につま先が引っ掛かりやすくなり転倒しやすくなります
動的ストレッチの所では足をパタパタしていましたが、筋トレでは片足ずつゆっくり行います
全然やり方が違いますよ
膝を伸ばしてつま先がしっかり見える位置に足部がくる様にしましょう
できたら下腿の外側に手を触れながら行います
このへんに前頚骨筋があります
つま先をゆっくり上げていき、しっかり上げきったら1,2秒静止しましょう (フィニッシュはしっかりと意識しましょう!)
そしてゆっくり元の位置に戻します
また膝をなぜ伸ばした状態でした方がいいのかといいますと、より歩いている状態に近づけるためです
転倒の原因の所のスライドを思い出してもらいたいのですが、「筋力低下」の他に「歩行能力の低下」がもあったと思います
ぼくらが歩いている時というのは、膝は曲がっているというよりも伸ばした状態に近いんですね
そこで膝を伸ばした状態でしっかりつま先を上げる筋力をつけたい訳なんですね
歩く際につま先をしっかり上げれる筋力の増加は「歩行能力の向上」にも繋がり、転倒予防にも繋がるわけです
②筋トレの「膝伸ばし」
この運動も動的ストレッチの所でも同じ名前の運動がありましたが全然やり方が違います
その違いも意識しながら見て頂けたら面白いですよ
こんな感じ
「膝伸ばし」の運動を説明していきます
この運動は膝を伸ばす筋肉である「大腿四頭筋」を鍛える運動です
この筋肉を触りながら行います
動的ストレッチの所では両足一気にしてバタバタ足を動かしていましたが、筋トレでは筋トレでは片足ずつゆっくり行います
足をしっかり上げたら、つま先が自分の方にしっかり向くように意識しましょう
この運動も足部をゆっくり上げていき、上げきったら1,2秒静止(フィニッシュはしっかり!)
そしてゆっくり元の位置に戻します
③「椅子からの立ち座り」
この運動はぼくが1番おススメする運動です
こんな感じ
この運動は大事なので今回講義で使用した配布資料にも詳しく書いていきました
ぼくが「立ち上がり」についてまとめた配布用資料(PDFファイル)
では、詳しく説明していきます
今回の椅子からの立ち上がりでは、手すりがないと立ちあがれない方なので、手すりなどは引っ張っても動かない重たいもの使って下さい
また手すりを使って立ち座りはできるんですが 「きつすぎる」 と感じる方は、椅子の座面を高くすると少し楽になります
①両足を肩幅程度に開いて手前に引きます
足を前に出し過ぎると、つっかえ棒の様になって立ち上がりにくくなってしまうので、足は手前に引きましょう!
足は肩幅程度に開いておきます
②手すりを軽くつかみます
できるだけ足の力を使うため、手すりは軽く持つように意識してみて下さい
理想は添えるだけ
③ゆっくりおじぎをして、できるだけゆっくりお尻を持ち上げます。太ももの筋肉が張るのを感じましょう!
手すりなしでも安定して立ち上がれる方は、太ももをつかんだ状態で立ち上がって、筋肉がピクッとするのを感じながら立ってみましょう!
④しっかり前を向いていい姿勢で立ちます (フィニッシュはしっかり!)
動作の終わり(フィニッシュ)をしっかり意識することで、効果的に運動を行う事ができます!
⑤しっかりお尻を突き出す様にしてゆっくり座りましょう。この時にも太ももの筋肉のハリを感じながらすると、とっても効果的です
お尻を後ろに突き出せば突き出すほど、足の筋肉を鍛える事ができます!
⑥いい姿勢で座ります (フィニッシュはしっかり!)
動作の終わり(フィニッシュ)をしっかり意識することで、効果的に運動を行う事ができます!
できたら1回ごとに手すりから手を離す事をオススメします
その方が体を前にもっていく(前方へのリーチの)いい筋トレにもなりますよ
これで「座ってする筋トレ」は終わります
立ってする筋トレ
今度は「立ってする筋トレ」を説明していきます
「立ってする筋トレ」は、手すりなしで椅子から立ち上がれる方です
「立ってする筋トレ」も沢山あるのですが、ぼくがお勧めするのはこの3つ
この運動も動的ストレッチの所で紹介した運動とカブっている運動が2つもありますが、名前は同じですがやり方は全然違いますのでその違いを意識していただくと面白いですよ
こちらは「立ってする筋トレ」の配布用資料(PDFファイル)
またこの中で1つだけ選べと言われたら、ぼくは躊躇(ためら)わずまた③の「椅子からの立ち座り」をお勧めします
理由は前回説明したのと全く同じです
では1つ1つの運動について説明していきます
①筋トレの「つま先立ち」
この運動も動的ストレッチの所でも同じ名前の運動がありましたが全然やり方が違います
その違いも意識しながら見て頂けたら面白いですよ
こんな感じ
この「つま先だち」は主にふくらはぎ(下腿三頭筋)を鍛える筋トレになります
動的ストレッチの「つま先立ち」はピョンピョン跳ねてドスンドスン音がする運動でしたが、筋トレの「つま先立ち」は全然違います
ゆっくりと踵をできるかぎり限界まで上げたら、つま先立ちの状態で1,2秒静止(フィニッシュはしっかり!)して、ゆっくり踵を降ろします(ドスンではないです)
ふくらはぎが張る感じを味わいながら行いましょう!
連続10回ぐらいゆっくりすると結構ふくらはぎがだるく感じると思います、もしそうなれば上手いこと筋トレができている証拠です
②筋トレの「足あげ」
この運動も動的ストレッチの所でも同じ名前の運動がありましたが全然やり方が違います
その違いも意識しながら見て頂けたら面白いですよ
こんな感じ
足上げは主に足を前に踏み出す時に使う 「腸腰筋」 を鍛える運動になります、歩行や立った時の姿勢にも関わる重要な筋肉です
動的ストレッチの「足上げ」はその場でバタバタ足踏みする様な運動でしたが、筋トレの「足上げ」は全然違い片足ずつゆっくり行います
ゆっくり片足を上げていき、上げきった所で1,2秒静止(フィニッシュはしっかり!)してゆっくり足を下ろしていきます
上げきった時にはつま先もこれ以上、上がらないぐらいしっかり上げておくように意識して下さい
プルプルすると思いますがw
この運動が楽にできる様な方は、上げた足を少し前にゆっくり踏み出す様にしてみてください
安定してきたら、徐々にゆっくり大きく前に出すように意識してみましょう!
また足を前に大きくだすのが簡単に感じられる様になった方は、踏み出すスタート位置を徐々に後ろに引いてみましょう
足を後ろに引いた状態から前に大きく踏み出す様にします
この運動はステップ動作練習という運動になるのですが、なぜこんな事をするのかといいますとこれも歩行に似せているんですね
転倒の原因の中に「歩行能力の低下」があったと思います
それも一緒に改善しようと欲張りな事をしている訳です
③立ち座り
内容は「座ってする運動」の所でいった内容と同じなので、詳しくはそちらに書いていますのでそちらをご覧ください
ただ今回、こちらの場合は手すりなしでも立ち座りが可能な方という事なので難易度を少し上げてみましょう!
膝など関節が痛くない範囲で座面を低くした状態からの立ち座りにチャレンジしてみましょう!
こうする事でより負荷の高い運動が行えます
これで足の筋トレの話は終わりたい所なのですが、こんな疑問を持たれる方もいるかもしれません
座るのが難しい方の転倒は中々考えにくいのですが、寝てする筋トレという事でついでに紹介します
寝てする筋トレ
寝てする筋トレも沢山あるのですが、ぼくがお勧めするのはこの3つ
こちらは「寝てする筋トレ」の配布用資料(PDFファイル)
この3つの中から更に1つに選べと言われたら、ぼくは②の「足あげ」を選びます
③の「お尻あげ」もとってもいい運動で、これができる様になるとおむつ交換の時や、ベッド上をずって移動する際にも使えたりするなど普段の生活にも繋がるとってもいい運動です
しかし筋トレになれていない方にこの運動をしてもらうと、太ももの後ろ側の筋肉が(ハムストリングス)がつってしまう(筋痙攣)場合が多く観られます
「 あ痛てててて…!!!!」 となってしまう方が結構多いんです
つってしまうと、かなりの痛みを伴なうので筋トレのモチベーションが下がってしまう事があるんですね
「痛い」から「嫌じゃ!」となってしまっては困ります(・_・;)
また②の「足上げ」でも③の「お尻あげ」で鍛えたい筋肉と殆ど同じ筋肉を鍛えられるので今回は②としました
①「つま先あげ」
こんな感じ
この運動で鍛える筋肉は「前頚骨筋」で足のつま先を上げる筋肉です
両膝は痛みのない範囲で伸ばした状態で行いましょう
両足先をゆっくり限界まで上にあげます
足先を上げきった所で1.2秒静止(フィニッシュはしっかり!)してゆっくり戻します
②「足あげ」
こんな感じです
片膝を立てた方が腰痛を防ぐことができるので、この運動は片膝を立てて行います
上げる方の足は、痛みのない範囲で膝を伸ばしてください
できるだけ足が体から離れた高い所までいくように、限界まで足を高く上げましょう
その際上げきった所でつま先が自分の方にできるだけ向くように意識してみてください
限界まで上がった状態で1.2秒静止(フィニッシュはしっかり!)してゆっくり戻します
この筋トレでは、上げた方の足では「腸腰筋」や「大腿四頭筋」が主に鍛えられ、膝を立てた方の足では「大殿筋」や「ハムストリングス」が主に鍛えられます
③「お尻あげ」
こんな感じ
この運動で主に鍛える筋肉は主に「大殿筋」と「ハムストリングス」です
両膝は痛くない範囲で立てて、お尻を限界までゆっくり上にあげます
限界まで上がった状態で1.2秒静止(フィニッシュはしっかり!)してゆっくり戻しましょう!
これで足の筋トレの説明が全て終わりました
最後にまとめ
転けることは筋力が弱くなることの影響が大きいので、弱りやすい足の筋力をつけるような運動について色々紹介させていただきました
今回、ぼくの講義を受けて家で筋トレをされると思います
もしされる中で「ちょっと変だな?」「調子が悪い」など感じられたら、かかりつけの先生に診てもらう事をおススメします
ここまでが講義で話をした内容です
最後まで読んで頂きありがとうございました
今回の内容を更に詳しくしたものが以前に訪問看護師向けに作ったものです
下にリンクをはっておきますので興味のある方は見て頂けたら嬉しいです
・転倒予防がなぜ重要なのか?(訪問看護師さん向けの転倒予防の講義①) |
また今回講義に参加して頂いた30名ぐらいの地域住民の皆さん、今回発表する機会を与えてくれた地域包括支援センターの方、設営を手伝ってくれた方々、講義のために訪問時間を変更してくれた患者さん、ありがとうございました
誰かの何かの参考になれば嬉しいです
がんばっていきまっしょい!
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参考・引用文献
関連リンク
(ぼくがした講義・スライド)
・転倒予防がなぜ重要なのか?(訪問看護師さん向けの転倒予防の講義①)
・転倒の原因を考える(訪問看護師さん向けの転倒予防の講義②)
・転倒予防にオススメの運動 (訪問看護師さん向けの転倒予防の講義③)
・地域住民の方に転倒予防の講義をしてみた!(地域住民の方向けの転倒予防の講義)
(講義・スライドの元ネタ)
・転倒予防①(転倒が寝たきりの原因となる理由、訪問看護・リハビリ と 転倒)
・転倒予防②(転倒の原因、「段差」は転倒の原因ではない?)
(その他)
・法人リハビリスタッフ向けに「転倒予防」の講義をしてみた!(来月の告知あり)
・第43回リハビリテーション特別研修会(介護予防推進リーダー士会認定事業)
・介護予防推進リーダー研修